オンライン授業グッドプラクティス

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スポーツA

NO 24
科目名 スポーツA
対象 医学部/歯学部/薬学部 1セメスター、工学部(建築/土木学科) 3セメスター
担当教員 永富 良一(医工学研究科)
受講人数 38人、47人
シラバス→
授業内容 本来であれば、サッカーを通じてチームスポーツにおいて役割をお互いの関係の中から理解しながらチームのリーグ戦での勝利を目指す内容。しかしオンラインのため、身体トレーニングの理論と実践に変更。サッカーについても関連する自宅でできるトレーニングを紹介。
授業形態 ・ビデオオンでのライブ授業
・ワンポイントレクチャー(開始時あるいは休憩中、5分程度:1〜2回)
・身体トレーニングについて。目的とする運動にとって強化が必要な体力要素、トレーニングによる身体の適応の生物学的メカニズムと実践における条件、トレーニング効果を減弱させない食事内容など。
・サッカー関連:役割の認識(従来シラバス参照)・サッカー博物館紹介・必要な身体能力など
・準備運動:準備運動の必要性について、ストレッチング後に上肢・体幹の可動域が拡大することを体験させ、最初は全員で、途中からはブレークアウトで実施するようにした。
・体力評価とトレーニング
・トレーニングで実施するエクササイズに関しては、全てライブデモンストレーションでやり方のポイント、ケガをしないための条件を指示した。
・体力評価(筋力トレーニング):一定のリズムで腕立て伏せ、腹筋、背筋、ランジ(lunge:左右交互に大きく足を踏み出す→沈み込む、元の立位姿勢に戻る、を繰り返す運動)を各自が続けられなくなるまで実施。運動自体が筋力トレーニングになると同時に、筋力評価になる。
・その他のトレーニングに、ほぼ2〜3週毎に、サッカー関連、持久力、高強度、目的にあったトレーニングとテーマを決め、それぞれ10から15分ずつ実施。6月後半以降は上記のテーマ進行にしたがってブレークアウトにより各ブレークアウトグループで実施する時間を増やしていった。サッカーに関連においては下半身の可動域拡大とバランスを強化するエクササイズ、持久力トレーニングはインターバルを設けない10〜15分間連続で実施する下半身あるいは全身エクササイズあるいはサーキットトレーニング、高強度運動は短い時間(20秒)の間でできるだけ速く反復するエクササイズを実施し20〜40秒の休憩インターバル後に再びエクササイズを実施する、いわゆる高強度インターバルトレーニング(HIIT)を実施した。さらにSNS上のコンテンツの紹介や、受講生自身の検索も推奨した。
・筋力評価・上述した全てのトレーニングにおいて時間設定があったとしても繰り返し回数の指定はせず、継続が無理と自分が判断したら無理して継続することはないことを強調した。
・ブレークアウト:4~5名のブレークアウトセッション10分〜15分。自己紹介。指定したエクササイズ・あるいは自分達で選択したエクササイズを声をかけあいながら実施。
•報告:筋力評価4種目の実施回数、ブレークアウトでの実施内容、授業における気付き・感想を各自のGoogle Spreadsheetに書き込む。筋肉痛が生じるので、1週間のうち何日筋肉痛が継続したか、日数も振り返り記入。ブレークアウトにおける他のメンバーの貢献度評価(3段階)
•授業は全て、全受講生の許可を得た上で録画し、希望に応じて欠席者が閲覧できるようにした。
•スナップショット
o解説中
o準備運動(ブレークアウト)
o筋力トレーニング(全体・ランジ)
o筋力トレーニング(ブレークアウト・ランジ)
oリグティング(ブレークアウト)
使用LMS Zoom
評価方法 体育実技はほとんどの学部学生にとって必修であり、「スポーツA」という同名科目なので、種目間・担当教員の間において評価基準が異なるのは好ましくない。オンラインにおける体育実技は非常勤も含めて教員にとって初めて体験なので、2/3以上参加していればA, それ未満であればDとした。教員によってはオンデマンドの課題(トレーニング・日常生活行動の評価など)を提示して、それについての実施レポートをもって評価を行っていると聞いている。
本授業では、毎回の授業後、次の授業までにGoogle Spreadsheetに上記項目を記入を求め、教員は毎週末までに記載内容をチェックし、出席回数を満たしている場合はA,それ以外はDとした。
工夫した点
・ブレークアウトによる受講生間の交流(連帯感):受講生、特に1年生はクラスメートに会う機会がないため、自己紹介を行うこと、Zoomのランダムなブレークアウト機能を利用し、毎回異なるメンバーになるようにした。メンバーが2〜3回続けてあまり変わっていないと申し出があった場合にはマニュアルでメンバー変更を行った。結果、この授業で初めて同級生と対話した、一緒に汗を流した、他学部の学生と仲良くなれたという感想が複数得られた。またブレークアウト中のエクササイズにおいてはお互い励まし合うことも進めた。
・トレーニングによる達成感:トレーニング効果の体感による達成感を受講生が得られるようにするために、限界まで追い込むことにって変化(適応)が得られること、その生物学的な背景に基づきトレーニング理論の基礎を解説。個人によって体力は異なるので、全員が同じ負荷を同じ回数を行うより、一人一人ができるところ(限界)まで実施することが重要であること。できる回数が少なくてもそれが限界に近ければ必ず効果が得られることを強調し、回数のノルマをつくらないことを強調した。また達成感を強化するため記録を行うことにより振り返りを行い、成果を確認できるようにした。
・今回の授業評価は相対評価は行わないが、将来的に相対評価に利用できる可能性を意識して、ブレークアウト時のグループメンバーの貢献度を3段階で評価してもらうようにした。
・Google Spreadsheetに記入された気付き・質問には、一つ一つ返答をSpreadsheetのコメント欄に記入した。誤った理解を正すとともに、授業で伝えてきれていない点について教員が気付くことができるようになった。
・本来であればサッカーの授業なので、エクササイズ・トレーニング以外のサッカー関連のスキルトレーニングを2回にわたって実施した。1回目はビニール袋(レジ袋)を膨らませてボールにみたてて、自宅でリフティングを実施。回数がのびる工夫(中に紙や適当な重量があるものを入れる)をしてもらった。サンパウロのサッカー博物館の「ボール」の展示コーナーを紹介し、ブラジルで過去「ボール」のかわりに用いられた、新聞紙を丸めたもの、石、なべ、など足で蹴ってゲームを楽しめるものを紹介した上で、次週までに各自で自宅でボールとしてリフティングが可能なものをみつくろって2回目にそれを用いたリフティングを行った。
・7月に入り気温が高くなり、空調が十分でない学生も見受けられた。熱中症の概説を行い、脱水症に陥ることが危険であることを強調し、授業中の水分補給を勧奨した。ただし窓を開けると騒音がもれるため、締め切る必要がある学生もいた。それぞれの環境で工夫してもらうこととした。
・星陵キャンパスの通信環境は必ずしもよくないため、またZoomを使ってみて、Hostがブレークアウトを頻回にのぞきにいくと原因は不明であるが、例えばサーバーのオーバーフローなのか通信が途絶してしまうことが起こった。Polycomの会議システムを保有しているため、Polycomサーバーにアクセスしておき、ブレークアウトが使えなくなる等の機能の制約はあるが、バックとして有用であった。ただしZoomの契約料はアップした。
反省すべき点
・上記の工夫はしたが、やはり体育の授業として伝えられる価値は半減以下である。なによりチームとしてお互いの関係の中で自分の役割を技術レベルにかかわらず見つけていくという体験を提供することは実現できていない。
・ブレークアウトで学生同士の対話がすすまないケースがあった。学生からのコメントにおいても、「会ったことのない他人」と会話をすることは苦手だとの感想もあった。一方、それを克服していきたいというコメントもあった。効果的な学生同士のアイスブレークを誘導するコンテンツが必要だと思ったが、まだ実現できていない。
・予想していたことであるが、同じことを繰り返すことがマンネリ化につながり飽きることが特に7月後半に数名の学生から指摘された。筋力強化のプログレスを振り返りで確認できるようにするためやむを得ず、その他のコンテンツにテーマを設けてメリハリをつけるようにしたが、もう一工夫必要であると感じた。
・想定はしていたものの、やはりエクササイズの種類(ジャンプ動作や強くステップを踏むエクササイズなど)は自宅の環境によっては騒音を生じさせる可能性があり、実施できない学生が若干名いたこと。
その他気が付いたこと
・本来体育実技の授業は対面で行うことにその価値がある。個人種目であれチーム種目であれ、運動能力、性格、考え方が異なる受講生が、自分自身も含めてそれを認識し、共通の目標に向かって共同作業を行うことが重要である。一方、上述したように受講生同士のインターアクションを少しでも取り入れること、筋力増強効果を実感し、この期間における成果を記録として確認できるようにしたことによって、達成感・連帯感に裏付けられた「やる気・motivation」が受講生に芽生えたように思う。
・オンラインではその価値は半減あるいはそれ以下にならざるを得ない。したがってお世辞にもこのやり方がベストプラクティスとは言えない。
・成績評価にあたっては技術的なトラブルが生じることも十分想定されていたため、スポーツAでは統一された評価を行うことを決めており、初回の授業で説明していたため、成績に関するクレームはなかった。
・成績評価にあたっては技術的なトラブルが生じることも十分想定されていたため、スポーツAでは統一された評価を行うことを決めており、初回の授業で説明していたため、成績に関するクレームはなかった。

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