オンライン授業グッドプラクティス

  • HOME
  • 自然科学総合実験

自然科学総合実験

NO 21
科目名 自然科学総合実験
対象 工学部(機械知能、電気電子情報)・医学部(医学・保健)・歯学部 1セメスター
担当教員 理学・薬学・工学・農学部・生命科学研究科と高度教養教育・学生支援機構の教員
受講人数 810人(火曜日280人、木曜日220人、金曜日310人)
シラバス→
授業内容 従来の物理、化学、生物、地学の内容を融合した融合型理科実験で、自然科学における“実験”や“観察”を通して、論理的思考能力、継続的に新しいことに挑戦する意欲と科学的な文章を書く力を養成する科目である。
授業形態 例年は対面実験のため、12の実験テーマを実施していたが、2020年度前期は9つの実験に限定して実施した。受講生は実験テキストとGoogle Classroom(以下、Classroomとする)にアップロードされたオンライン教材(実験動画とパワーポイント教材)を視聴し、取得したデータを自分自身で解析して、レポートを執筆する(参考の実験テーマを参照)。受講生が実験を楽しめるように、オンライン教材だけでなく、身の回りにあるものを使って、受講生自身が創意工夫して実験装置を作り、データを取得する実験テーマを新しく開発して運用した(自作振り子で重力加速度を測定する実験とペンのインクを用いたペーパークロマトグラフィーの実験)。3年前から自然科学総合実験に導入しているレポートの評価指標(ルーブリック)を今年度も同様に受講生と教員とで共有し、レポート作成と評価に役立てた。授業開始直後の時期に2回、レポート作成演習を実施し、レポートの構造やパラグラフライティング等のレポートの書き方とルーブリックについて解説し、受講生の理解を深めた。これらルーブリックや演習での知識に基づいて、受講生はレポートを作成することになる。授業開始後4週間は、実験視聴とレポート作成演習が交互に実施されたため、2週間に1度レポートを提出することになり、5週目以降は毎週レポートを提出することとなった(参考のスケジュールを参照)。レポートの提出にあたっては、Classroomを利用した。Classroom上にレポート用のテンプレート(wordとpages)を準備しておき、受講生はこのテンプレートをダウンロードしてレポートを作成し、PDF形式としてClassroomにアップロードする。Classroomに登録された教員は、いつでもどこでもアップロードされたレポートにアクセスして、ルーブリックに基づいて採点を実施した。採点後、教員は「限定公開コメント」欄に、レポート執筆に関する注意点やこれからの課題点についてのコメントを記入することで、すべての受講生に丁寧なフィードバックをおこなった。
○授業前(ISTUを使用):
1) ISTUに授業ガイダンスの日程や実験スケジュールとClassroomへのリンク先とクラスコード、授業前アンケートのリンク先(Google Form)を掲載した。
2) ガイダンスはGoogle Meetをもちいて、各学部2班に別けてリアルタイムで実施(Meetの参加者上限が250名のため)し、実験スケジュール、評価方法、ワープロソフトによるレポートの作成方法について説明し、その場で質問を受け付けた。
3) ガイダンスの模様は収録し、ISTUとClassroomにてオンデマンド資料として、パワーポイント資料とともに掲載した。
○授業中(Classroomを使用):
1) Classroom上に4つのトピック(お知らせ、教材へのリンク、質問窓口、レポート提出)を立ち上げた。
2) “お知らせ”には、パソコン利用に関する技術的な支援窓口、ワープロソフトでのレポートの書き方資料、ファイルアップロードの具体的な方法資料、レポートの書き方に関する一連の資料、2回分のレポート作成演習のパワーポイント資料と収録動画を掲載した。
3) “教材へのリンク”には、9つのオンライン実験教材へのリンクを掲載した。
4) “質問窓口”には、9つの実験に関する質問窓口を掲載した。
5) “レポート提出”には、9つの実験テーマの提出窓口を掲載した。

受講生は、“2)お知らせ”を閲覧して注意事項を確認し、“3)教材へのリンク”からスケジュール通りにオンライン実験教材を視聴し、“4)質問窓口”から教材やレポートに関する質問をし、“5)レポート提出”から執筆したレポートのファイルをPDF形式でアップロードする順番となる。
使用LMS Google ClassroomとISTU
評価方法 教員はClassroomにアップロードされたレポートにアクセスして、設定されたルーブリックに基づき評価し、レポート点(1〜5点)をつける。レポート点と出席点(レポートを提出することで3点)の総合点により、90%以上をAA,80%以上90%未満をA, 70%以上80%未満をB, 60%以上70%未満をCとした。
工夫した点
・「いつでもどこでも」が特徴であるオンデマンド型の授業ではあるが、実験の受講スケジュールを定めるとともに、授業時間における視聴を勧め、受講ペースを作ることができるように工夫した。このスケジュールから3週間以上外れる学生には、教務課を通して学部に修学指導を依頼した。
・対面実験と異なり、オンデマンド型の理科実験では、教員やTAが学生と直接質問等で交流することができないために、オンライン実験教材は丁寧に作り込んだ。動画教材では可能な限り20分以内とし、必要に応じて複数作成するよう工夫したほか、パワーポイント資料ではメモ欄に説明文を加えた。一部は電子書籍化にも取り組んだ。
実験テキスト(大学生協でオンライン販売)を事前に予習し、オンライン実験教材を視聴して実験内容を確認し、実験データを取得てデータ解析をおこない、それらの情報を取りまとめてレポート執筆できるように工夫した。
・オンライン教材だけでなく、身の回りにあるものを使って、受講生自身の創意工夫のもと自力で実験装置を作り、丁寧にデータを取得する実験テーマを新しく開発し、受講生が実験を真剣に楽しめる工夫をおこなった。
・対面実験と異なり、オンデマンド型の理科実験では、学生が教員やTAに直接質問ができないために、“質問窓口”をClassroomに設ける工夫をした。受講生からは履修等に関する質問が寄せられた。
・“レポート提出”トピック作成にあたり、Classroomの標準機能であるルーブリックを利用する工夫をおこない、学生と教員がそれぞれ評価基準を理解した上でレポートの評価結果を閲覧できるようにした。
・アップロードされたレポートの「限定公開コメント」欄に、レポート執筆に関する注意点やこれからの課題点に関するコメントを記入するように教員に依頼する工夫をおこなった。その結果、「限定公開コメント」には、実験レポートへの図の添付方法、実験内容、自身のレポートの課題点に関する質問など、多岐に渡る質問が寄せられ、これらの質問に対して、担当教員(理学部・薬学部・農学部・工学部・生命科学研究科の教員)が非常に丁寧に対応していただいた。質問のやりとりはのべ3000件にも上り、受講者の約60%が利用したことになる。教員が丁寧にコメントしたことで、学生が積極的に質問をし、相互のコミュニケーションが生まれたと推察される。
・重複する質問や受講者全員で共有できる質問等を分類し、FAQとしてClassroom上の“お知らせ”で公開する工夫を行なった。これにより、平易な質問の数は減少した。
・授業後半の時期(7月)にレポート提出数が少ない学生に対して、特別なClassroomを立ち上げてレポートの作成支援をおこなった。
反省すべき点
・Google Meetを利用して、リアルタイムでガイダンスを実施したが、参加者上限が250名であることを当初把握しておらず、混乱を招いた。
・修学指導・レポート指導がオンラインであるため、メール以外の連絡手段がとれなかった。
・実験開始当初(5月中)はレポートの提出率が高かったが、6月に入り、急激にレポートを提出できなくなる学生が増えた。この時期にレポートが作成できない学生に対して、レポート作成支援といった修学指導以外の対応をとるべきだった。
・Classroomでは、未提出レポートの特定が難しく、支援が必要な学生を見出すまでに時間がかかる。そこで、レポート提出状況を把握するために、独自のExcelマクロファイルを作成し、毎週Classroomの“すべての成績”からレポートの提出状況を管理した。この試みをもっと早い段階で始めるべきだった。
・受講生は自宅にて一人で実験に取り組まなければならなかったため、受講生同士が交流できる環境作りを考案するべきだった。
その他気が付いたこと
・学修成果
受講生は、通常の実験を経験できなかったものの、自宅実験やオンライン教材を介して取得したデータを解析することを通じて、多くの学生は本科目の目的の一つである新しい実験テーマに挑戦する機会を経験することができた。また、Classroomを通じて、教員がレポート執筆に関する注意点や今後の課題点などをコメントし、受講者から寄せられた実験内容に関する質問やレポート評価に関する質問に大変丁寧に対応していたことにより、受講生は実験結果を論理的に思考して、科学的な文章にまとめる力が獲得できた可能性がある。これらは本実験科目の履修前後での学生アンケートの結果からも裏付けられている。
・(参考)
実験テーマ:
1)環境放射線を測る
3)自作と創意工夫で重力加速度を求める(自宅実験)
4)物質の電気電動
6)簡単な有機化合物の合成とクロマトグラフィー(自宅実験)
8)燃料電池
9)弦の振動と音楽
10)細胞
11)DNAによる生物の識別
12)生体高分子の形と働き

スケジュール:
1、ガイダンス (リアルタイム配信)パソコンでレポートを作成する方法
2、実験動画視聴1 (2つの班は自宅実験)
3、レポート作成演習 I (レポートの構造とパラグラフライティングの基礎)
4、実験動画視聴2 (2つの班は自宅実験)
5、レポート作成演習 II (レポート作成の注意事項、パラフレーズ、引用文献の示し方)
6、実験動画視聴3(2つの班は自宅実験)
7、実験動画視聴4(2つの班は自宅実験)
8、実験動画視聴5(2つの班は自宅実験)
9、実験動画視聴6(2つの班は自宅実験)
10、実験動画視聴7(2つの班は自宅実験)
11、実験動画視聴8(2つの班は自宅実験)
12、実験動画視聴9(2つの班は自宅実験)

<< 前のページに戻る